執筆者:張亜奇
出典:ウォール・ストリート・ジャーナル
クオンツ取引大手ジェーン・ストリートとインド規制当局との対立は一転したが、まだ終結には程遠い。同社は多額の預託金を支払ったことで、インド市場での取引再開を許可された。
インド証券取引委員会(SEBI)は、米国のクオンツ取引大手ジェーン・ストリート・グループLLCがエスクロー口座に「違法収益」とされる484億ルピー(5億6400万ドル)を預け入れた後、インド株式市場での取引再開を許可したと、メディアが月曜日、匿名の情報源を引用して報じた。
インド証券取引委員会(SEC)は先週、ジェーン・ストリートに対し電子メールでこの決定を通知した。7月14日、SECは声明で、米国企業の規制緩和要請を検討中であると述べた。しかし、報道によると、たとえ禁止措置が解除されたとしても、ジェーン・ストリートは直ちにインドのオプション市場に復帰する予定はないという。
この動きは、インド証券取引委員会が不正操作疑惑の調査を続けている中で起こった。金融業界では注目されているこの事件は、ウォール街の巨人と、契約数で世界最大の株式デリバティブ市場の規制当局との間で激しい争いに発展している。
捜査はまだ終わっておらず、法廷闘争は激化する可能性がある。
ウォールストリート・ジャーナルは7月4日、インドの規制当局が、ジェーン・ストリートが先物と株式を通じてインドの銀行株指数BANKNIFTYを買い持ちしたが、オプションを通じて買い持ちの7倍の規模の売り持ちを設定したと指摘したと報じた。
規制当局は105ページに及ぶ仮差し止め命令でジェーン・ストリートの株価操作戦術を詳細に開示した。まず指数を押し上げるため銀行指数構成銘柄を大量に買い、その後オプションの空売りで巨額の利益を上げ、2024年1月17日だけで8,600万ドルの利益を上げた。
取引禁止は一時的に解除されたものの、ジェーン・ストリートに対する規制当局の監視は依然として続いている。インド証券取引委員会は、同社のオプション、スポット、先物市場における取引に関する調査を継続すると発表した。調査の範囲には、インド国立証券取引所とボンベイ証券取引所の主要指数に関わる活動も含まれる。
ジェーン・ストリートの今後の動きは不透明だ。同社は証券取引委員会(SEC)の告発に対し、ムンバイの証券控訴裁判所に控訴することができる。また、今週中に、規制当局に対し、自らの弁明と個別審理を求める書面による回答を提出する期限を迎える。
論争の核心と巨額の利益
この訴訟の核心は、ジェーン・ストリートの取引戦略のあり方をめぐる両当事者間の根本的な意見の相違である。インド証券取引委員会が禁止命令を発令した数日後、ジェーン・ストリートは社内従業員に対し、同社はインド証券取引委員会の暫定命令の前提と内容に強く反対しており、同委員会が「日中指数操作」と呼ぶものは、実際には金融市場で一般的に行われている「基本的な指数裁定取引」であると述べた。
しかし、インド証券取引委員会(SEC)の告発は厳しい。調査によると、ジェーン・ストリートは2023年1月から2025年3月の間に、インド国内のデリバティブ市場およびスポット市場での取引を通じて、総額約3,650億ルピー(約43億米ドル)の利益を上げていた。命令書によると、同社は禁止措置以前から、現地子会社および海外で登録された事業体を通じて、インド国内のスポット取引および株式先物取引に関与していた。
現時点では、どちらの側も最新の展開に対して公に反応を示していない。
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