USDT準備金の一部を委託か
暗号資産(仮想通貨)の米ドルステーブルコイン「USDT」を発行するテザー社は、米証券大手キャンターフィッツジェラルド社に準備金の一部を預けていることが明らかになった。ウォールストリートジャーナルが10日に報じた。
キャンターフィッツジェラルド社(以下、キャンター)は、ウォール街で最も有名な債券取引会社の一つだ。米国債を取り扱う25の主要ディーラーの一つで、連邦準備制度とも直接取引を行っている。1945年設立、1万人以上の従業員を擁している。
情報筋は、キャンターがテザー社のために約390億ドルの債券ポートフォリオを管理していると話した。テザー社は2021年後半に、規制当局との和解が成立した頃に、キャンターに準備金を移し始めたという。
テザー社は9日に、2022年末の資産額を約8.8兆円(670億ドル)と報告したが、そのうち約5.2兆円(392億ドル)は米国財務省証券で保有していた。準備金に関する信頼性を高めるために、安全性が高いとされる米国債の割合を増やしている形だ。
その他の資産には、投資信託の一種マネー・マーケット・ファンドや、現金、社債、貴金属、担保付ローンなどが含まれている。なお、担保付ローンについては、これからゼロにするため減らしていくと説明した。
当局と和解の経緯
テザー社は2021年10月、米商品先物取引委員会(CFTC)と和解している。
CFTCはこの際、テザー社は「USDTが法定通貨を裏付け資産として持っている」と説明してきた一方で、「少なくとも2016年6月1日から2019年2月25日までは、流通するUSDTを裏付けるだけの十分な法定通貨を保有しておらず」、虚偽の説明をしていたと指摘した。
さらに、準備金の保有を、規制下にない企業や第三者に任せていたことも問題視していた。テザー社は、違反行為については認めなかったが、約54億円(4,100万ドル)の罰金を支払ってCFTCと和解した格好だ。
この際テザー社は、すべて現金ではないものの、常に準備金は十分に保有しており、償還の要求に応じなかったことは一度もないと改めて強調している。
テザー社は、2021年2月にも、同様の疑惑をめぐって米ニューヨーク司法当局と和解していた。
こうした和解以降、改善としてテザー社は規制下にあるキャンターに準備金の一部を預けたとみられる。準備資産についても各所からの指摘を受けて安全性の高い資産の割合を増やし、定期的に準備金の内訳を報告するようになった。
当局は銀行と仮想通貨業界のつながりを注視
ウォールストリートジャーナルは、キャンターがテザー社にサービスを提供することには批判的な論調だ。背景として、米連邦準備制度理事会(FRB)などが1月に仮想通貨が銀行にもたらすリスクを指摘していたことを挙げた。
FRBの他、米通貨監督庁(OCC)と米連邦預金保険公社(FDIC)は1月、FTX破綻などを受けて、仮想通貨がもたらすリスクを複数列挙。「銀行の仮想通貨関連エクスポージャーを注意深く監視していく」と説明していた。
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